「行動着:着替えを少なくするウェアを活用」(Vol.16)

登山ウェアの基本コンセプトとして定着した「レイヤリング」という考え方こそ、無駄を省き、ウルトラライト化するための方法論であることは前回述べました。今回からはどのようなウェアが有効なのかをシーンごとに検討してみましょう。まずは行動着です。朝起きてから夜寝るまで、さらには家を出てから帰宅するまで、基本的に着用し続けるウェアです。ウルトラライトハイキングの方法論では「ウェアラブル」という考え方があり、身につけているものの装備重量は計算にいれません。実際に着続けるウェア=行動着については
(1)着替えの必要が少なく、ずっと着続けられること
(2)頻繁な脱ぎ着の必要が少なく、ある程度の気象条件の幅において着続けられること
この2点が重量そのものよりも重要になってきます。安全確保をしたうえで、着替えを少なくできることが軽量化にはよほど有効だからです。
○撥水ベースレイヤー
着替えが必要になる最大の原因は「濡れ」にあります。雨、沢といった外的要因だけでなく、汗による濡れが大きな原因のひとつです。「濡れ」が冷たいだけでなく、乾く瞬間に気化熱で体温が更に奪われるのです。夏でも低体温症になるのはこのためです。吸汗速乾機能のカットソーは確かに定番ウェアとしてはずせないものですが、乾くスピードよりも早く汗が供給されてしまえば、さすがの吸汗速乾機能もお手あげです。
そこで注目すべきは、「耐久撥水ベースレイヤー」と称するFinetrackの製品です。
今までは各社「汗をすばやく乾かすこと」に機能の主眼をおいてきましたが、かいた汗が瞬時に乾くなどということは現時点ではおこりません。そこで発想の転換、「汗をはじくことで肌を濡らさないようにする」という機能を突きつめたのです。機能の詳細はホームページ(注1)にゆずりますが、これによって汗をはじめとする濡れの不快感と体温低下とを大きく回避することができるのです。
○ウインドシャツ
100g前後の防風、透湿、撥水ウインドブレーカーが近年再び注目を集めています。
GORE-TEXレインウェア登場以前、まだ「レインウェア=蒸れて濡れてしまうゴム合羽」だったころは、
稜線上での防風、保温のため、ウインドブレーカーは登山&ハイキングの必需品でした。しかし、蒸れの少ないGORE-TEXレインウェアの登場以降、レインウェアでウインドブレーカーの役割も兼用するようになり、次第にウインドブレーカーはハイキングウェアのリストから姿を消していったのです。
2000年前後にあいついで発表された、「GOLITE バーク」「patagoniaドラゴンフライ」の登場が大きな転換期だといえます。バークはポリエステル100%の普通のウインドブレーカーですが、重要なポイントは従来の製品以上に「透湿性」を重視していたことです。寒いとき、風があるときにだけ着るのでなく、ハイキングの最中に「シャツ」のように着続けられる。それ以降「ウインドシャツ」という表現が使われるようになります。防風効果と透湿性にすぐれた速乾のポリエステルシャツというわけです。
ドラゴンフライは高い撥水性をうたうことで、防風、透湿、撥水のオールウェザーシェルとして進化していきます。当初はエンデュランススポーツも意識したカテゴリーでしたが、現在のフーディニにモデルチェンジするにあたり、アルパインシェルとしての位置づけが明確になっています。多少の風雨の際にも着続けられる「ソフトシェル」といえるでしょう。(注2)
化学繊維の撥水加工が進化し、非常に薄い生地が登場することで、ウインドブレーカーは息を吹き返します。防風、透湿、撥水、速乾のバランスに優れたシャツであり、ソフトシェルとして進化したのです。
トレイルランニングの非常用シェルとして注目されることが多いウインドシャツですが、ハイキングの行動着として更に注目されてもよいのではないでしょうか。
ウルトラライトなレイヤリングの基本とは・・・
「ハイキング中の着替えや脱ぎ着を極力少なくするウェアを選ぶこと」
注1)ファイントラック http://www.finetrack.com/product/product_floodrush_skin_mesh.html
ODBOX特集ページ http://www.odbox.com/outdoor/goods/women/finetrack/index.html
注2)あくまでシャツ、ソフトシェルの範疇の製品であることに注意してください。
撥水機能の向上には目を見張るものがありますが、決してレインウェア、ハードシェルの類ではありません。簡易レインウェアとして採用する際は、それらのリスクをしっかり個人で認識しましょう。
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