「システムで考える〜クッキング編(中編)〜」(Vol.13)
「最低200ccの水を沸騰させられること」というウルトラライトなクッキングシステムの前提がはっきりしたところで、これを満たすミニマルなストーブとクッカーを考えてみます。
○ストーブ
ハイキングで利用可能なストーブは燃料別に「ガソリンストーブ」「ガスストーブ」「アルコールストーブ」「固形燃料ゴトク」「ブッシュストーブ」が主要なものとしてあげられます。この中でウルトラライトハイカーに最も選ばれているストーブは「アルコールストーブ」と「固形燃料ゴトク」です。
1.アルコールストーブ
本体重量:10g〜110g程度
200cc沸騰の必要燃料:約10g(注1)
本体重量は真鍮製のトランギア社(スウェーデン)のもので100g、チタン製のヴァーゴ社(アメリカ)のものやアルミ缶から作られたハンドメイドストーブなら30gをきる本体重量が実現できます。圧倒的な本体重量の軽さは大きなメリット。更に重要なのは燃料計算の容易さにあります。残燃料が見えないガスストーブのキャニスター缶は必要とする燃料計算がむずかしく、予備も含めた必要量以上に燃料を持参することになりがちです。アルコールの場合は燃焼時も残燃料が視認しやすく(注2)、予備を含めての燃料計画がたてやすいので無駄な燃料を持参する必要がなくなります。燃料の入手も薬局で可能なため、世界中どこでも使えるストーブといえます。さらに燃料ボトルもプラスチック製にできるため軽量化がはかれます。ガスの場合は空のキャニスター缶の重量だけでも100gを超えることを忘れずに(注3)。
ストーブ本体はほぼメンテナンスフリー、「故障しらず」というのも大きなメリットです。
2.固形燃料ゴトク
本体重量:10g〜30g程度
200cc沸騰の必要燃料:約5g(注4)
古くはエスビット社の固形燃料とセット販売されているゴトクが有名でしたが、現在はチタン製の固形燃料用ゴトクも入手可能です。メリットはアルコールストーブ同様に、本体重量の大幅な軽量化とコンパクト化、燃料計算の容易さにあります。これらについてはアルコールストーブ以上に効果的といえます。またアルコールストーブのようなプレヒートがいらないので、燃料ロスを最小限に抑えられることも重要です。デメリットは煤がでてしまうこと(注5)と燃料の入手場所が限られることですが、軽さを全てに優先するなら非常に有効なストーブといえます。
両者とも火力が弱く、ハイキング用ストーブとしては従来かえりみられなかったものですが、必要とされる前提によっては十分に使用可能、かつ思い切った軽量化がはかれるストーブなのです。
これら2者に共通する重要なポイントは「燃料計算のたてやすさ」にあります。本体重量だけならガスストーブでも100g以下のモデルがあるなか、あえてアルコールや固形燃料を選ぶ理由として「燃料の無駄を省ける」という点は大きなウェイトを占めるのです。
また化石燃料を使用しない地球に優しいストーブという点も忘れてはなりません。ウルトラライトハイキングの重要な思想である「自然とのリンケージ」を実践するうえで最適なストーブといえるのです。
○ウルトラライトストーブのデメリット
こうしたミニマルなストーブ類には当然デメリットもありますが、もちろん対策もあるのです。
(1)火力の弱さ
アルコールストーブの火力アップのための試みが多くの方によって行われています(注1)が、一般的にガスやガソリンに比べ火力が弱いのも事実です。あくまで最低限の水を沸かすことに特化したストーブだと考えてください。特に積雪期の水作りなどには適していません。
(2)耐風性の低さ
火力の弱さに起因するものですが、耐風性が非常に低いため風防との併用は必須となります。また風防は風除けだけでなく、熱効率をあげる反射板としても重要です。ガス&ガソリンストーブと異なり、本体周りすべてを囲うことで効率よい湯沸しがはじめて可能になります。
(3)脆弱な安定感
本体の小ささと軽さゆえ、安定感にかけます。草地ではなかなかストーブが安定しません。フィールドでは完全フラットな固い場所を探すのは困難です。平らな面をもつ適当なサイズの石をストーブベースとして利用すると安定感が増します。
次回は後編、クッカーを具体的に考えてみます。
注1)アルコールストーブの構造によって火力も消費燃料も異なりますので、各自で計測することが重要です。ここではトランギア社のものをはじめとするオープンフレームタイプでプレヒート用の燃料も含めた量を考えています。アルコールストーブの構造、特性、データについては以下のサイトが参考になります。
Zen Backpacking Stove http://zenstoves.net/
JSBサイト http://homepage1.nifty.com/jsb/
山より道具 http://ulgoods.exblog.jp/
T’s Stove http://www2.plala.or.jp/ts_stove/pg47.html
注2)オープンフレームタイプに限られます。
注3)液化ガス110gが入っている最も小さなタイプにおいて
注4)エスビット社の固形燃料の場合、スタンダードタブレット(5g)×1個で200cc、ミリタリータブレット(15g)×1個では600ccの水を沸騰させられます。もちろん200cc×3回にわけてもOKです。標高2500m、気温2℃までは確認済みのデータです。使用状況にもよりますが、固形燃料のタブレットが持っている熱量としては大きく違わないと思われます。
注5) 軍用固形燃料で煤がでないタイプもありますが、揮発しやすく火力が弱いため、200ccの水を沸騰させるのが困難です。
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