「システムで考える〜スリーピング編 (2)スリーピングバッグ類〜」(Vol.10)
テント類は形状によって重量が大きく変化します。ライトウェイト、ウルトラライトとはいえ100gのタープから1300gのダブルウォールテントまで多様な選択ができるのです。ウルトラライトハイキングでは自身の体力と自然環境、季節とのバランスからその時々の装備を選んでいくのですが、テント類がその顕著な例といえます。それにひきかえスリーピングバッグは形状のバリエーションが少ないことと、体感温度、耐寒能力といったきわめて個人的な側面が多いことから、積極的に軽量化が語られることが少ないギアのひとつです。
○重量
対応温度目安:−5〜0℃ 0〜5℃ 5〜10℃
中綿)ダウン:850g 550g 350g
中綿)化繊:1400g 1000g 700g(注1)
各メーカーの対応温度は統一基準(注2)がないのであくまで目安ですが、無雪期(6〜10月)に日本の中級山岳エリアでウルトラライトハイキングを実践する場合は防寒着を活用しての保温力アップなども考え、持参するスリーピングバッグは上記赤字クラスを目標としましょう。
−ウルトラライト 700g〜(500g前後が適当)
現在の日本市場ではこのクラスでバランスの良いスリーピングバッグというと、ダウンに軍配が上がります。しかし湿潤な日本の気候でシェルターとの併用を考えると、ダウン並みの保温力と軽量性をもつウルトラライトな化繊スリーピングバッグがのぞまれるものでしょう。
○化繊スリーピングバッグの軽量化〜キルト考察〜
保温力の重量比でダウンに劣る化繊ですが、湿潤な日本では有効な素材であるはずです。そこで化繊スリーピングバッグの軽量化を考えてみましょう。ウルトラライトハイキングを体系付けたレイ=ジャーデインが自作し、推奨している「キルト」です。
「キルト」とはスリーピングバッグから背面上部2/3とフード部分、ジッパーなどを取り外したものといえます。掛け布団にスリーピングバッグのフットボックスを取り付けたものといってもよいでしょう。背面上部は体重で中綿のロフトがつぶされるためマットの方が重要になります。フード部分は帽子やフード付きダウンインナーで代用できます。他の必要装備で代用できる箇所を省略し、スリーピングバッグのエッセンスだけを残したものがキルトだといえるのです。
背面上部2/3とフード部分、ジッパーを取り外せば、20〜35%程度の重量減が可能です。化繊スリーピングバッグをキルトにカスタマイズすることは日本のウルトラライトハイキングでもっと検討されて良い方法かもしれません。(注3)
○マットと防寒着との組み合わせ
スリーピングバッグの軽量化にふみきれない最大の原因は「寒さへの不安」です。ということはその不安を軽減することができれば軽量化に一歩ふみだせます。そこで重要になるポイントが「マット」と「防寒着」。就寝時の寒さ、最大の原因は地面からの冷えです。身体が接する地面に熱が奪われるのです。ロフトがつぶれてしまう背面を考えれば、スリーピングバッグよりもマットを重要視した方が効果的(注4)なのです。また防寒着の選択も重要です。就寝時の保温力アップに活用するならばダウンジャケットが最適。近年著しい軽量化が進んでいるダウンジャケットはフリースに替わる防寒着としてウルトラライトスタイル以外でも定番となっています。
ウルトラライトなスリーピングシステム(スリーピングバッグ類)とは・・・
「重量700g以下が目安、500g以下を目指してみよう」
「軽量性と保温性の両立はマットと防寒着がポイント」
「湿潤な日本では化繊中綿が理想的、現状では軽量化のためにもキルト改造も有効」
次回はスリーピング編Bマットです。
注1)重量目安は本体重量となります。この表は日本市場で購入できるスリーピングバッグの中で、「軽量」「コンパクト」を標榜する数社のモデルを念頭に作成しています。
注2)欧州では「ヨーロピアン・ノーム」という統一基準が存在します。
詳細は「山岳装備大全11」(2007:村石太郎『山と渓谷11月号』 山と渓谷社)
注3)いまではショップ店頭で見なくなった「ハーフバッグ」いわゆる半シュラもダウンジャケットとの組み合わせで同様の効果をえられるウルトラライトなスリーピングバッグのひとつ
注4)詳細は「ハードコア人体実験室」(2007:新井裕紀『Rock&Snow』 山と渓谷社) |